山の手の下町でほっとする

麻布十番は、江戸時代から続く商届街である。
昔は芝居小屋もあって毎晩夜店が立ち、神楽坂と並ぶ都内ても有数の繁華街だった。
とすると、今の渋谷か新宿か。記録によると、元禄11年(1698)に古川の川さらいをした時、人足の十番グループがこの辺の担当だったためについた地名とか。本当に地名なんてええかげんなものである。
麻布十番は、惣菜屋とパチンコ屋、ブティックと焼き鳥屋が仲良く同居している町。なぜかなごんでしまうのは、他の店を威圧するような大型チェーン店がなく、代々店を守ってきた人々のこの土地を愛する気持が、町全体をほんわかと包んでいるからだろうか。
サンダル履きの主婦たちが晩飯のおかずを品定めする脇を、外人の一家がのんびりと通り抜ける。昔ながらのアッパッパなんかをディスプレイした洋品店や、つっかけを並べた靴屋も健在だ。
ショッピングカーを引いた(つまり現役主婦の)お婆ちゃんたちが、街頭で立ち話をしている。「はい、たくわん!」と樽から出して包んでくれる食料品店で、この町の懐しさの元に思い当った。揚物でも漬物でも、パックではない、そのまんまを山盛りにして売っている。その匂いが、町全体に漂っているのだ。
江戸以来の老舗も多い。そばの「総本家永坂更科布屋太兵衛麻布総本店」「麻布永坂更科本店」「総本家更科堀井」、豆の「豆源」。名物「たぬき煎餅」、鯛焼の元祖「浪花家」。韓国料理やフランス料理も加わり、まだまだ美味しそうな店はたくさん。
加えて、六本木に飽きた人たちが行くような新しい店がぽつんぽつんとあるのが、この町の面白いところ。
さて、きょうのコースの仕上げは、麻布十番温泉。都内でも珍しい本物の鉱泉で、腰痛・神経痛、そしてヒステリーに効果ありという、まさにストレス多い都会人のための温泉である。ゆったりとお湯につかって、大広間で芸人たちの踊りでも眺めながら湯上がりのビールを一杯。これを至福と呼ばずして何と言おうか。

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